デザインの風

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#02 広告=ラブレターがめでたく読まれれるために

こちらは2022年3月に弊社メールマガジンに掲載された記事の再掲です。

あなたの書いたラブレターは読まれない

前回、デザイナーの仕事はラブレターの代筆と書かせていただいた。失礼を承知で申し上げると「あなたの書いたラブレターは読まれない」あるいは「読んでも記憶に残らない」ということだ。素人とプロのラブレター書きの一番の違いは、文章が上手いとか下手ではない。読まれる前提で書くのが素人、読まれない前提でなんとか読ませようと書くのがプロ、そこなのだ。たとえば、あなたが今年受け取った年賀状。全部読んだはずだが、いま内容を思い出せるものが何枚あるだろうか。

潜在顧客は引く手あまたの人気者で、ラブレターなんか毎日何十通も届く。ただの手紙では読まれない。どんな送り方をしたら自分のラブレターに気づいてくれるか。封筒の色は?、形は?、手触りは?、場合によっては香りや味だって・・・どんな工夫をしたら開封してくれるか仕掛けを考える。
幸運にも開封してくれたとして、読み始めてもらうにはどう書き出すのがいいのか。かしこまった文体で真剣さを伝えようか。フランクな口調で笑いもとったほうがいいだろうか。飽きずに最後まで読んでもらうには、起承転結をどう組み立てようか。相手を褒める言葉に気に触る言い回しはしていないだろうか。自己紹介が自慢げに感じたりしないだろうか。
気にしたらキリがないのだが、とことん気にしながら、書いては消し、消しては書きを繰り返すのである。

良いところ全部を伝えようとしてはいけない

自分でラブレターを書いてはいけない理由の一つに、自分は自分のことを知りすぎているということがある。広告のデザイン戻って言うと、戦術は常に1点突破。「そうかなあ、この商品には、あんなことこんなこと、いっぱい良いところがあるのに」と思われるでしょうが、まずは見られて読まれてこそ。チラ見されたらラッキーくらいの広告で、あんなことやこんなことまで伝えようというのは無理な話なのだ。まずは気づいて見てもらうことに全力を注ごう。注意を引いたら、興味を持たれて、いいねと思われて、覚えてもらって、受け入れていただく。いわゆるAIDMA(アイドマ)の法則だ。

Attention ・・・・・・ 注意・注目
Interest ・・・・・・ 興味関心
Desire ・・・・・・ 欲求
Memory ・・・・・・ 記憶
Action ・・・・・・ 行動・購入

では広告は、注目させて、興味を引いて、理解させて、納得させて、すぐさま購買に走らせるほど万能であるかというと、そんな広告があったら詐欺である。注目、興味、理解、までは広告の力でできるが、納得して購買行動を取るかどうかは商品力次第だ。
インターネットが発達してからは、AISAS(アイサス)という考え方が主流になっている。

Attention・・・・・・ 注意・注目
Interest ・・・・・・ 興味関心
Search ・・・・・・ 検索・情報収集
Action ・・・・・・ 購入
Share ・・・・・・ 共有

ますますAttentionの役割が大きく

そうすると今や広告の役割は、注意を引いて、興味を持たせるまでではないか。商品のWebサイトにリンクを張ったりQRコードを付けたりはするが、商品のホームページだけを信じて買ってくれる人は少数派だ。買い物サイトの★の数やレビューを見たり、SNSで評判をサーチして購入するのが当たり前になっている。
ラブレターに話を戻すと、注目を引いて、あなたのラブレターを興味を持って読んでくれたとする。次は、相手はあなたの名前で検索をするので、★3.5くらいにはなる活動を発信していなくてはならない。好きな食べ物、読んだ本、好きな音楽、好きな推し、好きなファッション、etc・・・友達にも「いいね」をもらえるよう普段からの付き合いが大切になる。結局は人間力(商品力)に行き着くわけだ。

おや、良いデザインを説明するためにラブレターを引用したのに、いつの間にか、良いラブレターを書くことが目的に変わってしまったようだ。頭を冷やすために、今回はここまで。

ユメックス株式会社 西山耕一

ユメックス株式会社
代表取締役 プランニングディレクター/デザイナー

西山耕一

愛媛県久万高原町生まれ。血液型:O。山羊座。動物占い:ペガサス。14歳でグラフィックデザイナーを志し、21歳でデザイナーとしてプロダクションに入社。23歳で独立、30歳でユメックスを設立し現在に至る。元スタッフ10人以上がフリーランスまたは会社を設立し、心強いパーティを形成。お気に入りの言葉は「デザイナーの仕事はラブレターの代筆」。

ユメックス株式会社webサイト

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