実務で役に立つ人事労務の話

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#02 継続的なテレワークのために確認しておきたいポイント①

こちらは2021年1月に弊社メールマガジンに掲載された記事の再掲です。

新型コロナウイルスの感染拡大を受け、一定の地域に再び緊急事態宣言が発出されました。
これにより「出勤者を7割減らす」という具体的な目標が政府から示されています。

昨年4月の緊急事態宣言発出時には、ほぼ在宅勤務に切り替えていた企業でも、徐々にその比率を減らし、秋ごろからはほぼ出社、という企業も多くなってきていたのではないでしょうか。

労働者を感染のリスクから守るためには、在宅勤務などのテレワークの実施は大変重要です。 緊急事態宣言が出た“今”だけでなく、継続的にテレワークを行っていくために今回はそのポイントをお伝えしたいと思います。

テレワークを継続することの効果はひとつじゃない!

まず、制度を導入し、それを継続させていくためには会社と労働者、双方にメリットがあることが重要です。
テレワークを導入・継続することの効果は新型コロナウイルスなどの感染症対策だけではありません。
主に、以下のような効果が考えられます。

①業務生産性の向上

営業職をイメージしていただけると分かりやすいのではないでしょうか。
顧客先からいちいち会社に戻るのではなく、カフェや移動中にモバイルワークを行うことで効率的に働くことが可能になります。

②新規採用・離職の防止

在宅勤務により、子育てや介護などを理由とした離職を防止することができます。また、居住地にとらわれず、優秀な人材の採用が期待できます。

③社員のワーク・ライフ・バランス向上

通勤時間がなくなることで、家族との時間や趣味の時間など、“ライフ”の時間をより多く確保することが可能になります。

④コスト削減

会社の水道光熱費に限らず、大きなオフィスが不要となればその分のコストも削減できます。

⑤事業継続性確保(BCP対策)

自然災害や感染症の流行等の非常事態が発生しても、普段から在宅勤務等を実施していれば、事業活動を止めることなく継続することが可能です。
以前より在宅勤務を実施していた企業では、今回の新型コロナウイルスの感染拡大においてもスムーズに業務が継続できています。

テレワークでも労働関係法令は適応になる

テレワークを行う場合においても、労働基準法や労働安全衛生法、労働者災害補償保険法などの法律が適用されます。
よって、法定労働時間を超えて労働した場合や法定休日に労働した場合には36協定の届出や割増賃金の支払いが必要です。

また、テレワーク導入にあたり「就業規則の変更やテレワーク規程の作成は必要か」と悩まれるかも知れません。
テレワーク時の労働条件が通常勤務時と全く同じであれば、現在の就業規則のままでも問題ありません。
しかし、実際は何らかの労働条件の変更が生じる場合が多いと思いますので、現在の就業規則とは別に『テレワーク規程』を作成されることをおススメします。
特に、在宅勤務時の水道光熱費などを労働者に負担してもらう場合には、必ず就業規則やテレワーク規程にその旨を記載しなければなりませんのでご注意ください。

労働時間管理はどうする?

テレワークを行う場合においても、労働関係法令が適用されるとお伝えしました。
つまり、現状では、テレワークであっても裁量労働制の人や管理監督者も含めて、すべての労働者の労働時間の状況を客観的な方法その他適切な方法で把握することが必要です。

では、客観的な方法とは何を指すのでしょうか?
これは、タイムカードやICカード、勤怠管理システム、パソコンのログインログオフ時間、使用者による現認などが該当するのですが、テレワークについてはこのうち、勤怠管理システムやパソコンのログインログオフ時間が該当すると思います。

特に勤怠管理システムであれば、労働時間の状況が一目瞭然で、集計もしやすいのでおススメですが、もし未導入の場合には、以下のような勤怠ルールを徹底して、労働時間を把握しましょう。

①業務開始時

業務開始時に「業務を始める」という報告をメールやチャット、電話など所定のツールで行う。

②休憩開始時

休憩に入る際「休憩に入る」という報告をメールやチャット、電話など所定のツールで行う。

③休憩終了時

休憩が終わる際「休憩を終え、業務に戻る」という報告をメールやチャット、電話など所定のツールで行う。

④業務終了時

業務終了時に「業務を終了する」という報告をメールやチャット、電話など所定のツールで行う。

今後については、労働者の自己申告だけで労働時間を管理しても原則として問題ない、との指針が示される方向で検討が進んでいるようです。
労務管理が簡便になれば、さらにテレワークの導入が進むことが期待できます。

長時間労働に注意!

テレワークに関するある調査によると、30歳未満の若い労働者ほど、時間外・休日労働の頻度が高い傾向が出ています。
原因としては、業務の進め方が分からずに時間外労働が増えてしまったり、何となくだらだらと仕事をしてしまい時間外労働が増えてしまっている(こちらについては若い人に限った話ではありませんが・・・)という声が聞かれます。
また一方で、管理監督者の労働時間が増えているとの調査結果も出ています。

本来、テレワークはワーク・ライフ・バランスを実現するための制度のひとつであるはずなのに長時間労働になってしまっては本末転倒です。
以下のような手法を使って、長時間労働を防止しましょう。

特に勤怠管理システムであれば、労働時間の状況が一目瞭然で、集計もしやすいのでおススメですが、もし未導入の場合には、以下のような勤怠ルールを徹底して、労働時間を把握しましょう。

役職者等からの時間外・休日・深夜のメール送付の抑制

次回もまたテレワークについて取り上げます。どうぞお楽しみに!

あすそら社会保険労務士事務所 代表 大野知美

あすそら社会保険労務士事務所 代表
特定社会保険労務士・キャリアコンサルタント

大野 知美

IT企業人事部勤務を経て独立。企業人事出身であることから『当事者目線に立った支援』が強み。主に顧問先企業の人事労務相談や就業規則の作成、各所での講演活動等を行っている。
その他、中堅・中小企業の働き方改革や健康経営の推進、女性活躍の推進にも注力している。

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