デザインの風

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#05 企業のシンボルマークについて

こちらは2022年7月に弊社メールマガジンに掲載された記事の再掲です。

シンボルマークは子供の名前と同じ

シンボルマークは企業の顔。現代の企業の多くはCIやVIに沿って作成され、細かく使用規程が定められているはずだ。しかし少し前まで、昭和時代に設立された会社などでは、創業社長が自社のシンボルマークを指差して、「このマークは俺がつくったんだよ。ここの円は茶碗のフチを使って描いたんだ。ワッハッハ」てな話をまま聞いたものである。そして商品や広告に使われているものと、看板や会社案内などに使われているものが微妙に違うなんてこともあったのだ。

令和のいま、さすがに茶碗のフチはいないだろうが、パソコンを使って自作する創業社長はいるはずだ。なぜなら、自分が起こした会社は自分の子供と同じ。子供の将来を思いながら名前を考えるように、社名やシンボルマークには思いを込めたいからだ。
シンボルマークは企業理念を表すもの。意外かもしれないが、オリンピックのピクトグラムのように、商品やサービスをわかりやすく図案化たシンボルというのはあまりない。自動車メーカーで、車の形をシンボルにしている企業はないのではないか。

企業理念のシンボル化は俳句のごとし

創業社長だろうがサラリーマン社長だろうが、自社の企業理念について話し始めると、5分や10分は語りつづけるだろう。NHKのアナウンサーがニュースを読む速度は、民放よりゆっくりめの1分300文字程度。10分だと3000文字になるのだが、それだけの熱い思いの企業理念を10数文字、場合によっては、四字熟語や2文字、1文字で表現して世の中に訴えなくてはいけない。ましてマークである。理念を想起させる象徴的なビジュアルに置き換えるわけだ。言いたいことを俯瞰して、抑えて削って、洗練された俳句をつくる作業に似ているかもしれない。

人々にとってのシンボルマーク

ところで、社長が熱い思いを伝えたい相手である世の中の人々にとって、シンボルマークはどう役に立っているのか。社長と違って50分しかない昼休みに、割引が今日までの牛丼を店が混み合う前に行ってかっ込んで、今朝の新聞に書評が載っていた新書を買って、カフェで少しばかり読み進めたところで弁当派の同僚からLINEで頼まれた水性ボールペンの替芯を、コンビニに寄って残業用のシリアルバーといっしょに買っていかねばならならなかったりするのだ。星の数ほどのシンボルマークから自分がいま必要とする店や商品を識別するのがせいいっぱいで、企業理念をかみしめている暇はないのだ。だから識別できて目立てばいい、というわけではない。マークに込めたスピリットは、何百回も何年も目にしつづけることで感じるものでもあるからだ。

美しいフォルムを描くコツ

最後に、どうしても自社の企業理念を自分でシンボル化したい社長のために、とても役に立つヒントをひとつ。心理学で登場するルビンの壺。壺だと思って見ていると、向かい合った人の横顔に見えてくるというポジとネガの関係にあるあの図形である。つまり美しい壺を描きたければひたすら美しい横顔を描けばいい。その原理で、美しいマーク(ポジ)を描きたいなら、その背景(ネガ)を描くことを意識すれば、必然的に美しいポジが生み出されるのだ。そして、マークは看板のように大きく使われたり、商品の肩にぽつんと使われたりと、さまざまである。うんと近づいたり、離れたり、ひっくり返したりして多視点から見ること。

それでもしっくりこないようなら、ぜひプロに頼んでくださいね。(^^;

ユメックス株式会社 西山耕一

ユメックス株式会社
代表取締役 プランニングディレクター/デザイナー

西山耕一

愛媛県久万高原町生まれ。血液型:O。山羊座。動物占い:ペガサス。14歳でグラフィックデザイナーを志し、21歳でデザイナーとしてプロダクションに入社。23歳で独立、30歳でユメックスを設立し現在に至る。元スタッフ10人以上がフリーランスまたは会社を設立し、心強いパーティを形成。お気に入りの言葉は「デザイナーの仕事はラブレターの代筆」。

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