実務で役に立つ人事労務の話

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#11 メンタル休職からの復職における注意ポイント

こちらは2021年10月に弊社メールマガジンに掲載された記事の再掲です。

最近、メンタルヘルス不調による休職や傷病手当金の申請に関するご相談が増えているように感じます。

だいぶ様々な規制が解除されつつあるものの、やはり新型コロナウイルス感染症により突然働き方が変わったり、プライベートでも人と会えない状況が続いていたのが少なからず影響しているのではないでしょうか。

皆さんの会社では、いかがですか?
今回は、メンタル疾患と休職制度について取り上げたいと思います。

休職制度にはどのようなものがあるか

休職制度は、労働基準法などに定めがあるものではなく、会社独自の制度になります。
主には、以下のようなものが挙げられます。

このうち、判断に悩んだり、実務上問題になりやすいのが私傷病による休職、つまり労働者の病気やケガによる休職です。

私傷病休職制度とはどんな制度なのか

ここからは私傷病休職制度について取り上げます。
私傷病休職制度を設ける目的は、従業員に傷病の治療の機会を与え、職を失わないようにするという点にあります。
休職制度の内容や休職の期間、休職期間の取扱い、復職などについて就業規則等に具体的に規定することが必要です。

私傷病による休職制度を適用する際の留意点としては、まず、主治医の診断書の提出を前提とすることです。医学的見地から休職の必要性と必要な療養期間について確認します。
休職は従業員本人の権利行使ではなく、会社が命じるものですので、あくまで会社が診断書を元に休職を発令するかどうかの判断を行うことになります。

尚、会社には労働契約に付随して安全配慮義務(従業員が安全で健康に働けるように配慮する義務)が課せられていますので、休職発令や復職の判断にあたってはそのことを念頭に置く必要があります。

メンタル疾患による休職からの復職

一般的に、メンタル疾患による休職からの復職については以下のようなプロセスを踏みます。
産業医がいる場合には助言を求め、積極的に関わってもらうようにしましょう。

特にメンタル休職からの復職の場面において、会社で定める休職期間の期限の関係などで従業員が復帰を焦っているケースでは、その意向が強く反映されて復職に向けた診断書が作成されてしまうことがあります。

無理をして従業員が復職することにより、会社として安全配慮義務を果たすことが難しくなる場合があるため、復職の判断にあたっては注意が必要です。

“治癒”の考え方を明確に

従業員には、労働契約上100%能力を発揮する義務があります。裏を返すと会社側には不完全な労務提供を受ける義務はありません。治癒して初めて労務提供を受ける、というのが原則的な考え方です。

“治癒”がどんな状態なのか。「原則として、従前の職務を通常の程度に行える健康状態に回復したときをいう」などど、就業規則などに規定しておくのが良いでしょう。

復職にあたっての就業上の配慮

会社が治癒を認め、復職した後も、しばらくは就業上の配慮が必要です。
以下が就業上の配慮の例ですので、ご参考になさってください。

復職当初は短時間勤務からスタートしてもらうことが多いと思います。メンタル疾患の特徴として朝が辛い、ということがあるため、出社の時刻を遅くする、という措置が取られることがありますが、決められた時間に出社できることは復職の第一歩です。始業時刻に合わせて出社し、終わりの時間の方を短くするのが望ましいでしょう。

ただ、いきなり始業時刻に出社し、業務を行うことが厳しいようであれば、実際の業務を始める前に、試しに始業時刻に出社し、特に業務は行わず、本を読んだりレポートを書いたりして勤務時間を過ごしてみるという試し出勤制度を設けるのもひとつの方法です。
復職者本人や上司と相談し、状況を見ながら復職のプロセスを検討するのが良いでしょう。

今回はメンタル疾患による休職について取り上げましたが、当然ながら従業員の皆さんが心身ともに健康で働くことができるのが一番です。
仕事や職場における人間関係が原因でメンタル疾患につながることのないよう、日頃から過重労働の防止やハラスメント防止への継続的な取組みを行っていきましょう!

この人事労務コラムは今回で最終回となります。
皆さま、1年間お読みいただき、ありがとうございました。
皆さまの職場が、誰もがいきいきと働き、能力を最大限発揮できるような職場になりますよう、今後も陰ながら応援させていただきます。

あすそら社会保険労務士事務所 代表 大野知美

あすそら社会保険労務士事務所 代表
特定社会保険労務士・キャリアコンサルタント

大野 知美

IT企業人事部勤務を経て独立。企業人事出身であることから『当事者目線に立った支援』が強み。主に顧問先企業の人事労務相談や就業規則の作成、各所での講演活動等を行っている。
その他、中堅・中小企業の働き方改革や健康経営の推進、女性活躍の推進にも注力している。

あすそら社会保険労務士事務所webサイト

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